Nagaoka Laboratory Graduate School of Information Science, Nagoya University

Lecture Material





 宇宙はビッグバーン以後、膨張しながら「物質」を生みだしました。夜空の星々はどのようにして生まれたのでしょうか。原子同士が反応していかに「分子」が生まれ、そこからいかに「生命」が誕生したのでしょうか? 生物と単なる物質とは何が違うのでしょうか? 本講義では、宇宙誕生に始まる壮大な「物質ダイナミズム」を“進化”をキーワードに理解しながら、「分子とは何か」、「物質とは何か」、そして「生命とは何か」を考えて貰いたいと思っています。

第0章 はじめに -自然科学のなかでの化学の位置付け-

§0-1 現象のスケールと物理量のオーダー -小さい大きい軽い重い遅い速い冷たい熱い-
§§ オーダーが違うという事 ・・・ 自然現象の程度の違い!
§§ 有効数字という考え方  
§0-2 次元と単位系(SI単位系)
§§ 次元とは何か? ・・・ 現象の種類を分類する
§§ 基本次元と基本単位
§§ 組立単位 ・・・ 基本単位の積あるいは商から組み立てられる単位
§§ SI接頭語 ・・・ 10の累乗倍を表わす接頭語を使い累乗倍の単位を作ることができる
§0-3 次元解析
§§ 次元解析の原理

第1章 宇宙は進化する ―宇宙の誕生と原子の誕生(“化学”誕生前史)

§1-1 宇宙と恒星 -はじめに光ありき!光エネルギー、質量となる!-(Part I: 272 kB、Part II: 490 kB)
---Part I--
§§ ビッグバン理論 … 膨張する火の玉宇宙
§§ 光、電磁波、電波、同じもの
§§ 素粒子の誕生
§§ 宇宙の進化 ―原子核反応と原子の生成
---Part II--
§§ 恒星の誕生
§§ 多様な原子の生成
§§ 分子の誕生と回転スペクトル
§§ 化学反応と活性化自由エネルギー
§§ 宇宙空間における化学反応と化学進化
§1-2 太陽系と地球 ―爆発を繰り返し、実りある物質に熟成!-( 399 kB)
§§ 惑星はどのようにして生まれたのか
§§ 太陽系惑星の特徴
§§ 半減期と放射性崩壊 ―太陽系の年齢
§§ 化学平衡と平衡の移動
§§ 酸と塩基
§§ 原始の大気と原始の海 ―その1― 高温の地表と酸性の海
§§ 原始の大気と原始の海 ―その2― 中性の海と酸素を含んだ大気の形成

第2章 物質が進化する -分子の形成と多様な集合体の現れ(“化学”の誕生)-

§2-1 原子と分子 -不思議な力が原子をつなぎとめる!-(Part I: 1,532 kB、Part II: 323 kB、Part III: 678 kB )
---Part I--
§§ 原子の構造
§§ 周期表 ―電子雲と電子配置―
§§ 価電子と原子価
§§ 古典的化学結合論
§§ 価電子と原子価
§§ 古典的化学結合論
§§ 古典的化学結合論の限界
§§ 閑話休題: 硝酸分子と硫酸分子はどんな形なのだろうか?
§§ ボーアの水素原子模型(N.Bohr、1913)
§§ 量子論的な波の干渉 ―とても不思議な量子という波―
[復習] 波が満たす方程式 -波動方程式―
§§ 電子が粒子的でもあり波動的でもある実験事実
§§ 粒子性と波動性を取り入れた方程式 ―シュレディンガー方程式の誕生―
§§ 量子論的な波と波動関数の解釈
§§ 水素原子中の電子の有り様
---Part II--
§§ 共有結合と分子(古典的化学結合論) ―原子価からの説明―
§§ 分子の構造 ―結合性軌道と反結合性軌道― 水素分子を例に!
[上級コース]
§§ 水素分子の電子のシュレディンガー方程式と波動関数Ψn(r;R)
§§ 化学結合生成の原理 <――分子軌道法の考え方による説明
---Part III--
§§ 身近な有機分子 ……炭素原子数に注目して有機分子を調べてみよう!
§§ NO2+はナフタレンのどこに付くのか? -フロンティア軌道理論の誕生―
§§ 熱反応と光反応で生成するものが違う? -軌道対称性理論―
§2-2 分子の集まり -分子が集まりおのずから組織をなす!-( 401 kB)
§§ その状態と状態変化
§§ 色々な結晶
§§ 熱力学第一法則 ―広い意味でのエネルギー保存則―
§§ ヘスの法則 ・・・化学反応での熱力学第一法則の現れ
§§ 熱力学第二法則 ・・・ エントロピー増大則(変化の方向性に関する法則)
§2-3 多様な集合状態 -分子の集合が反応し拡がって組織を創る!-( 832 kB)
§§ 散逸構造とは何か ―化学振動とリズム―
§§ 自己触媒反応 非線形非平衡開放系
§§ 反応拡散系とパターン形成 ‐濃度変化に対する物質拡散の考慮‐
§§ 物質の拡散と流れ
§§ 反応拡散系としてのグレイ‐スコットモデル
[上級コース] BZ反応のモデルーFKN機構とオレゴネーター

第3章 生物も勿論進化する -分子集合体が獲得した高度な自己触媒現象- 1,758 kB )

§3-1 分子と生命 -代謝と増殖、分子による地球型情報伝達メカニズム-
§§ アミノ酸 ・・・アミノ基とカルボキシル基を含む分子
§§ ペプチド結合(-C(=O)-NH-)
§3-2 視覚のしくみ ―ロドプシンとレチナール― (「生物物理の最前線」より)
§§ ロドプシンの光反応過程
§§ レチナールのシス-トランス光異性化反応
§3-3 DNAとガン ―発ガン性の一つの現れ―
§§ 核酸塩基 ・・・DNAを構成する基本的分子
§§ DNA ・・・生物の情報の貯蔵分子
§§ 発ガン性物質 例 ベンゾ[a]ピレン
§3-2 生物の進化 -突然変異と分子進化で適応度を上げろ!-( 527 kB )
§§ 現代進化論を支える生物学の基本事実
§§ 進化の原動力 ―自然選択―
§§ DNAの変異と突然変異
§§ 分子進化
§§ 分子進化の中立説
§§ 分子進化速度 ―DNAやタンパク質の変化速度―
§§ 分子時計と進化系統学(cf. 遺伝学電子博物館のホームページ)

第4章 おわりに 

§4-1 構造と反応    -ものの形、蓄えられたエネルギーの多寡で決まる-
§4-2 物質ダイナミクス -永遠に続く空間の広がりと時間の流れ!?-

<参考文献>
・高橋光一著 『宇宙・物質・生命 -進化への物理的アプローチ-』 (吉岡書店)
・濱口宏夫、黒田玲子、永田敬編著 『化学のすすめ』 (筑摩書房)
・A.スコット著、野中浩一訳 『生命のメカニズムがわかる本』 (HBJ出版局)
・神部武志、佐々木直幸、内藤正美、渕上信子著 『コンピュータ物理の世界』 (講談社)