Nagaoka Laboratory Graduate School of Information Science, Nagoya University

Lecture Material





 この世の全ての“もの”は、分子から成り立っています。また日常的な“物質の変化”は、分子の化学反応によって起こり、日常的な“物質の運動”も、分子集団の多様な動きによって生じます。極言すれば、この世の全ての“こと”も、分子から成り立ったっている“もの”が引き起こす“こと”なのです。こんな観点から、この世の中を見直す基礎として、この「化学基礎Ⅱ」では、化学の基礎的な理屈や考え方を織り交ぜながら、この世の中を、時間軸と空間軸を、大きく移動しながら、原子の成り立ちから始めて、生命の物質的仕組みにわたって、“この世”を考えます。

プロローグ ”はじめに”の前に

 「化学」は、物質の性質や変化を取り扱う学問です。その内容には、性質の説明や変化の法則を理解するための「基礎的側面」と、性質の分類と変化の表現を展開する「応用的側面」とがあります。本講義では、特に基礎的側面を取り扱います。最近の「高校化学」の参考書においても、「化学」を「理論」、「有機」、「無機」という3つの専門分野に分けて、全体を分類しているものがありますが、「大学化学」の特徴として、「高校化学」と比べると、かなり理論的であることが挙げられます。つまり、「高校化学」、中でも有機と無機分野では、暗記の側面が強かったと思いますが、「大学化学」では、より理屈や考え方に重点を置いて説明しようとします。例えば、「高校化学」では、K殻の電子は2個でL殻の電子は8個と、2×(nの2乗)と単に暗記したのではないでしょうか?「大学化学」では、その理屈である“量子化学”を学びます。「炭素の手は4つある」と覚えていましたが、その理屈は“原子軌道”や“分子軌道”を学習して学びます。

 本講義では、高校理科(とくに化学と物理)で使用されている用語はできるだけそのまま使用し、仕方なく改める場合と新しく使用する場合には、その用語が初めて出てきた際に分かるように“緑色文字”にしました。章立てや単元名等は、数研出版の理科のチャート式(R)新シリーズを基本に,部分的に同社の「改訂版高等学校化学Ⅰ」「同Ⅱ」を参考にして構成しました。これらは“黒色文字”で表しています。大学化学を理解するために必要な高校物理の学習項目は、適宜、最適な箇所で補習します。それらの場所は、目次中[ ]付の“橙色文字”で記してあります。その際の単元名等は、数研出版チャート式(R)シリーズ「新物理Ⅰ」「同Ⅱ」を参考にしました。新たに追加された単元名等は“青色文字”で記しました.

第0章 はじめに 272 kB)

第1編 物質の構成と構成粒子[→高校化学Ⅰ] 309kB)
第1章 物質の構成
§1-1 物質とその成分
§§ 物質探求の歴史
§§ 物質の表わし方と元素記号
§1-2 純物質と混合物
§§ 単体と化合物・混合物
§§ 混合物の分離

第2章 物質の構成粒子
§2-1 物質に関する基本法則
§§ 原子はどのようにして考えられてきたか
§§ 分子と分子説
§2-2 原子と電子配置
§§ 原子の構造
§§ 質量数,同位体
§§ 電子配置

[補習1]
第1編 運動とエネルギー(1) [→高校物理Ⅰ]
第1章 仕事と力学的エネルギー
( Part1 522 kB)
§1-1 仕事
§1-2 運動エネルギー
§1-3 位置エネルギー
§1-4 力学的エネルギーの保存則
第2編 波 [→高校物理Ⅰ]
第2章 仕事と力学的エネルギー
§2-1 波のしくみと種類
§2-2 重ね合わせの原理と波の干渉
§2-3 波の反射・屈折・回折
§2-4 ドップラー効果
第3編 原子と原子核 [→高校物理Ⅱ]
§3-1 電子
§3-2 光の粒子性
§3-3 X線とその粒子性
§3-4 粒子の波動性
§3-5 原子の構造とエネルギー準位
§3-6 シュレディンガー方程式 ―粒子性と波動性を取り入れた方程式 ( Part2 1,808 kB)
§3-7 水素原子中の電子の有り様
●直交座標から極座標へ[→高校数学「数Ⅲ+C」]
§3-8 固体の性質と電子

[/補習1]

§2-3 イオン
§§ イオン
§§ イオンからなる物質
§§ 元素の周期律
§2-4 分子と原子からなる物質
§§ 分子
§§ 原子からなる物質

第3章 粒子の相対質量と物質量
§3-1 相対質量と物質量
§§ 原子の相対質量
§§ 物質量
§§ 溶液の濃度
§3-2 化学反応式と物質量
§§ 化学反応式
§§ 化学反応式の作り方
§§ 化学反応式が表わす意味

第2編 粒子の結合と結晶[→高校化学Ⅱ]
第4章 粒子の結合( Part1 792 kB)
§4-1 元素の性質
§§ 元素の性質と化学結合
§4-2 イオン結合
§§ イオン結合とイオンからなる物質
§4-3 共有結合
§§ 共有結合と分子
§§ 結合エネルギー
§§ 配位結合(Part2 *** kB)
§4-4 金属結合
§§ 金属結合
§4-5 分子間に働く力
§§ 分子間力
§§ 極性
§§ 水素結合

第5章 結晶と物質の性質 ( 未 399 kB)
§5-1 金属の結晶
§§ 金属の結晶格子の種類
§5-2 イオン結晶
§§ イオン結晶の構造
§5-3 分子結晶と共有結合
§§ 分子結晶
§§ 共有結合の結晶
§5-4 結晶の種類と性質
§§ 結晶の種類と性質

第3編 物質の状態[→高校化学Ⅱ]
第6章 物質の三態 ( 未 399 kB)
§6-1 粒子の熱運動と三態の変化
§§ 拡散と粒子の熱運動
§§ 三態の変化
§§ 物質の融点・沸点と分子間力

第7章 気体
§7-1 気体の体積
§§ ボイルの法則とシャルルの法則
§7-2 気体の状態方程式
§§ 気体の状態方程式
§§ 混合気体と圧力
§§ 実在気体と理想気体

[補習2]
第4編 運動とエネルギー(2) [→高校物理Ⅰ]
第4章 いろいろなエネルギー 
( 未 399 kB) ==> 本編 第9章 へもミックス
§4-1 熱と温度
§4-2 熱と仕事
§§ 仕事による熱の発生
§§ ボイル・シャルルの法則
§§ 内部エネルギー
§§ 熱力学第一法則と気体の状態変化
§4-3 電気とエネルギー
§4-4 エネルギーの保存と変換
§§ エネルギーの変換と保存
§§ 熱現象における不可逆変化
§§ 熱機関の効率
第5編 熱と物質 [→高校物理Ⅱ]
第5章 熱と物質の状態
( 未 399 kB)
§5-1 物質の状態
§§ 物質の三態
§§ 熱膨張
§5-2 気体の法則と気体分子の運動
§§ ボイル・シャルルの法則
§§ 理想気体の状態方程式
§§ 気体の圧力(気体の分子運動論)
§§ 分子の運動エネルギーと絶対温度
§5-3 気体の内部エネルギーと比熱
§§ 気体の内部エネルギー
§§ エネルギーの保存
§§ 気体のモル比熱
§§ 等温変化と断熱変化
§§ 熱現象における不可逆変化

[/補習2]

第8章 溶液 ( 未 399 kB)
§8-1 溶解のしくみと溶解度
§§ 固体や液体が水に溶けるしくみ
§§ 水への溶解と電離
§§ 溶液の濃度
§§ 固体の溶解度
§§ 気体の溶解度
§8-2 希薄溶液の性質
§§ イオン結晶の構造
§§ 希薄溶液の凝固点
§§ 浸透圧
§8-3 コロイド溶液
§§ コロイド
§§ コロイド溶液の性質
§§ 親水コロイドと疎水コロイド

第4編 物質の変化[→高校化学Ⅰ]
第9章 いろいろなエネルギーから熱化学方程式へ ・・・化学熱力学 ( 未 399 kB)
§9-1 状態の変化
§9-2 熱と温度
§9-3 熱と仕事
§§ 仕事による熱の発生
§§ 内部エネルギー
§§ 熱力学第一法則と気体の状態変化
§9-4 化学反応と熱化学方程式
§§ 化学反応
§§ 反応熱の種類
§9-5 熱の出入りとヘスの法則
§§ ヘスの法則
§9-6 自由エネルギー ・・・広い意味でのエネルギーの考え方
§§ エントロピー
§§ 自由エネルギー
§§ 熱力学第二法則

第10章 酸と塩基の反応 ( 未 399 kB)
§10-1 酸と塩基
§§ 酸・塩基
§§ 水の電離と水溶液のpH
§10-2 中和反応
§§ 酸・塩基の中和の量的関係
§§ 中和滴定
§§ 塩
§§ 塩の加水分解
§§ 弱塩・弱塩基の遊離

第11章 酸化還元反応と電池・電気分解 ( 未 399 kB)
§11-1 酸化・還元と電子の授受
§§ 酸化・還元の定義
§§ 酸化・還元と酸化数
§10-2 酸化剤と還元剤
§§ 酸化剤・還元剤とそのはたらき
§10-3 イオン化傾向
§§ 金属のイオン化傾向
§§ イオン化傾向と金属の化学的性質
§10-4 電池
§§ 電池の原理
§§ ダニエル電池と乾電池
§§ 鉛蓄電池
§§ 燃料電池
§10-5 電気分解
§§ 電気分解のしくみ
§§ 電気分解と電気量

第5編 化学反応[→高校化学Ⅱ]
第12章 反応の速さと反応のしくみ ( 未 399 kB)
§12-1 化学反応の速さ
§§ 化学反応の速さ
§§ 化学反応速度式と反応速度定数
§§ 反応の速さを変える条件
§12-2 化学反応の進み方
§§ 活性化状態
§§ 活性化エネルギーと触媒

第13章 化学平衡
§13-1 化学平衡とその移動
§§ 化学平衡
§§ 平衡状態の変化

第14章 酸・塩基・塩と化学平衡 ( 未 399 kB)
§14-1 電離定数
§§ 弱酸・弱塩基の電離平衡と電離度
§14-2 水のイオン積とpH
§§ 水のイオン積
§§ pH
§14-3 塩と化学平衡
§§ 塩の水溶液の性質
§§ 緩衝液
§§ 弱酸・弱塩基の遊離
§§ 難溶性塩の電離平衡

第15章 おわりに

<参考書>
・P.W.アトキンス著 『物理化学(上)・(下)』(東京化学同人)
・野村祐次郎他著 『改訂版 高等学校 化学Ⅰ・Ⅱ』(数研出版)
・藤谷正一、木野邑恭三、石原武司著 『絵とき化学結合の見方・考え方』(オーム社)
・野村祐次郎他著 『新課程 チャート式シリーズ 新化学Ⅰ・Ⅱ』(数研出版)
・数研出版編 『改訂版 フォトサイエンス 化学図録』(数研出版)
・國友正和他著 『改訂版 高等学校 物理Ⅰ・Ⅱ』(数研出版)
・都築嘉弘著 『新課程 チャート式シリーズ 新物理Ⅰ・Ⅱ』(数研出版)
・A.スコット著、野中浩一訳 『生命のメカニズムがわかる本』(HBJ出版局)
・神部武志、佐々木直幸、内藤正美、渕上信子著 『コンピュータ物理の世界』(講談社)