***第16回尾張コンプレックスセミナー*************** 日 時:3月6日(木) 13時30分~ 場 所:人間情報学研究科6階616号室     (使用されている場合は603号室で行います) 発表者:金賢得 (京都大学 大学院 人間・環境学研究科 物性理論グループ(早川研究室)博士課程2年) 題 目:気体運動論から見た非平衡定常熱力学及び普遍的非平衡統計力学 内 容:  近年、佐々・田崎は平衡熱力学を拡張することで熱流存在下の非平衡定常状態に おける熱力学(Steady State Thermodynamics、以下 SST)の理論的枠組を提案した。 我々は、希薄気体を記述する気体運動論モデルとしては最も信頼のおける定常 Boltzmann方程式(剛体球分子・Maxwell分子)を微視的モデルとして採用してSSTを 検証しようと試み、その結果、SSTが定常Boltzmann方程式と整合しないことを示し た。本発表ではこの不整合という結果に対し、その解釈と考察を述べて議論したい。 また我々は、定常Boltzmann方程式から導出される非平衡定常分布関数が剛体球分 子とMaxwell分子との間で定性的に異なることを発見し、分子モデルに依らない普 遍的な非平衡定常分布関数は、たとえ分布関数を熱流などの巨視的量で表したとし ても存在しえないという事実を陽に示唆した。これは普遍的な非平衡分布関数の導 出を目指してJouらが提案したInformation Theoryとは矛盾する結果である。  本発表ではこの矛盾の原因について議論し、さらにInformation Theoryの枠組の 中で提唱された非平衡温度についても気体運動論的視点から考察を加えたい。また 本発表の最後では、現在進行中の非平衡「熱浴」壁境界に関する数値実験研究につ いて簡単に紹介したい。 ***********************************